エド&リーのブログ

別居中のアラフォーゴーストライターです。生き様もほぼゴーストです。結論の出ない話多めです。

【Bar】バー・のめんべぇ#2ジンさんとイワイさん(1)【No Man's Bay】

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ここは人無湾のそば、海岸通りを一本奥に入った場所にあるバー。その名も「のめんべぇ」。

ここは飲めない人が来るところ。飲める人はお断り。

この店は私一人で切り盛りしているが、実は私はアルバイト。オーナーは叔母の実叶子さん、私の母の妹だ。

この店が「のめんべぇ」になる前は、実叶子さんが「November」というバーを一人で切り盛りしていた。「November」の時はお酒も置いていたので、この店がお酒のない「のめんべぇ」になってからは「November」の常連さんはほとんど来なくなった。

でも、お酒がなくなっても、実叶子さんがいなくなっても、なぜか通い続けてくれている「November」時代からの常連さんもいたりする。ちなみに、「のめんべぇ」は本来飲めない人のための店なのだが、「November」時代からの常連さんもいるため、「飲める人でもシラフならOK」という暗黙のルールみたいなものがある。

この店は1枚500円のチケット制になっていて、チャージ料はない。冷たい飲み物は全て中ジョッキ。温かい飲み物は全てマグカップ。このアイデアは計算が苦手な私のために実叶子さんが提案してくれた。

実叶子さんは他にも私がこの店を切り盛りしやすいように、様々なアイデアを残していってくれていて、色々とお膳立てをしてもらった私は当初とても申し訳ない気持ちになり、一度は断ろうとしたのだが、それでも実叶子さんは「この店は琴ちゃんにみておいてもらいたいの」と言って、私にこの店を任せてくれた。

ところで今は19:00ちょうど。多分もうそろそろ「November」時代からの常連さんがやってくるはずだ。

「こんばんは…」

「こんばんは。いらっしゃいませ。あれ?今日はイワイさんはご一緒じゃないんですか…?」

「イワイさん、会社出る直前に電話に引っ掛かっちゃって。先行っててって言われたんで先に来ました。多分もうすぐ来ると思います。ここいいですか?」

「大丈夫ですよ」

「あ、アサヒでお願いします」

ジンさんは「November」時代からの常連さんで、少なくとも週に2回くらいは来てくれている。歳は多分30代後半だったと思う。坊主頭と濃いめの髭にシャツがトレードマーク。夏場はアロハシャツを着ている。駅前にある小さな編集プロダクションで働いているらしい。

そして、イワイさんというのはジンさんの職場の先輩で、ジンさんより一回り年上だと聞いたことがある。ジンさんとイワイさんはとても仲が良くて、いつも2人でやってくるのだ。ジンさんは物静かで紳士的な雰囲気があるのだが、いつかジンさんがいない時に、イワイさんが「ジンくんていつも家では全裸らしいよ。奥さんもなんだって。すごいよね」と言っていた。本当だろうか。

「お兄さんは今日は来られないんすか?」

「昨日は来てたんですけど、今日は多分来ないと思います」

この店は12.7坪の小さな店だ。L字型のカウンターに5席と、4名掛けのテーブル席が3卓。なので一応定員は17名。まぁ「のめんべぇ」になってから満員になったことはないけれど。ジンさんとイワイさんはだいたいいつも「L」の短い方の辺に2人で座っていて、決まってジンさんが壁側だ。ジンさんのジョッキのドライゼロが3分の1くらいになった時、イワイさんがやってきた。

「こんばんはー。お待たせいたしました…いやいやまったくですよ…」

「お疲れさまです」

「こんばんは」

「こんばんは~。あ、僕もアサヒでお願いします」

イワイさんはだいたいいつもTシャツを着ている。冬場はTシャツの下に長袖のシャツを着ている。そしてわりとよく喋る。

「琴音さん、ハンバーガーなんてないですよね?」

「ハンバーガーはないですけど、ホットドッグならできます」

「あ、じゃあホットドッグひとつお願いしていいですか?あーよかった」

「イワイさん、今日16時半くらいに昼行ってませんでした?食いますね」

「いやちがうのよそれが。たいした話じゃないんだけど、話していい?」

「あ、その前にさっきの電話、大丈夫だったんですか?」

「ああ、あれは大丈夫よ。結局向こうの勘違いだったみたい。まぁ俺もちゃんと確認してなかったところはあったし、申し訳なかったんだけどさ。大丈夫よ」

「それならいいんですけど、俺からも明日連絡入れといた方がいいっすかね」

「あぁいいいい。向こうも別に怒ってるとかじゃなかったし、大丈夫よ」

「ありがとうございます。社長はもう帰ったんですか?」

「うん、社長も俺と一緒に出た。明日はずっといないみたいよ」

「じゃあ明日はゆっくりしましょう。俺も今日は結構疲れました」

ドライゼロを出し、イワイさんがお喋りをしている間にホットドッグを作る。ホットドッグ用のパンをトースターで温めている間に、フライパンでソーセージを焼く。ソーセージの様子を見ながらキャベツを千切りにする。ソーセージが焼けたら千切りにしたキャベツを炒めて、塩コショウで味付けをする。隠し味にカレー粉もひとつまみだけ入れる。パンが温まったらバターを塗って、炒めたキャベツとソーセージを挟む。マスタードとケチャップをかけて、最後にフライドオニオンとパセリをかける。

「えーっと、で、なんだっけ?あ、そうそう俺さ、今日昼遅かったじゃない?もうヘトヘトだったからさ、駅前にあるあのハンバーガー屋さん、なんだっけ?」

「モスですか?マック?」

「あぁ、モスモス。モスバーガーよ。モスバーガーに行ったのよ。で、普通にモスチーズバーガーとオニポテとアイスコーヒのセットを頼んだのよ。で、待ってたのよ。あの店ってさ、席少ないじゃない?俺、レジが見える方の席に座ってたのよ。もう17時前だったしさ、夕食で来てる感じの人たちもいたんけど、まぁそんなに混んでなかったのね。俺入れて5組くらい?とにかく別に混んではなかったんだけどさ、店員さんは忙しそうにしてたのよ。そしたら70くらいかな?ちょっとヨレッとしたスーツ着たおじさんと、左脚の膝に、あれなんだろなー、サポーターっていうよりもなんかウレタンみたいなコルセットみたいなのを巻いて、松葉杖をついてるおばさんの夫婦が入ってきたのよ」

「お待たせしました」

「あ~ありがとうございます!嬉しい!いただきます」

「中の方ちょっと熱いかもしれないんで気を付けてくださいね」

「美味しいです。ありがとうございます…」

「あ、もう1杯アサヒお願いします」

「ジンくんもなんか食べる?ホットドッグ美味しいよ?」

「あ、俺は大丈夫です。で、どうしたんすか」

イワイさんは食べかけのホットドッグを見つめながら話し続ける。

「そうそう、それでね、松葉杖ついてるしさ、あら大変そうだな、ケガしちゃったのかな、何かの病気かな、なんて思いながらぼーっと俺は自分が頼んだやつが来るのを待ちながらその夫婦が注文するのを見てたの。そしたら、急にそのおばさんの方が『えーっ!』って大きな声出してさ。何事かと思って耳をすましてたら、どうやら期間限定の何かが終わっちゃってたみたいで、そのことで『えーっ!』って言ったみたいでさ。店員さんが『明日からなんとかが始まります』とか言って説明してたんだけど、そのおばさんは『えー。そうなのー。だったら最初からなんたらかんたら…』って言ってさ、まぁ不服そうだったけど何か頼んでたのよ。ご主人らしき人はその間ずっと黙って横に突っ立ってたんだけどね。で、店員さんが『こちらでお召し上がりですか?』って聞いたら『持ち帰り!』ってそのおばさんが言ってさ。まぁちょっとその言い方もトゲがあるなーと思って横目に見てたのよ。まぁもう横目っていうか思いっきり見てたんだけどね」

イワイさんは笑いながらホットドッグを頬張る。

(2につづく)

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